ドイツ旅行で必ず立ち寄りたいVW(フォルクスワーゲン)の「アウトシュタット」「ガラスの工場」とは?

メーカーの戦略
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今や世界第1位の座をトヨタと争っているドイツの自動車メーカー「フォルクスワーゲン」ですが、その躍進は、中国などへの「新興国シフト」、MQBと呼ばれる「モジュール化」の推進などの成功が理由だと言われていますが、フォルクスワーゲンの強さの秘密はそれだけではありません。

ここでは、そんなフォルクスワーゲンの歴史を紐解くとともに、私が思うフォルクスワーゲンの本当の強さの理由をご説明したいと思います。

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フォルクスワーゲンブランドを築き上げたフェルナンド・ピエヒ

フォルクスワーゲンには、フェルナンド・ピエヒという、車作りについて非常に熱い想いをもった創業者がいます。

フェルナンド・ピエヒは、名作フォルクスワーゲン・ビートル等を手掛け、戦後ポルシェを創業したフェルディナント・ポルシェの孫にあたります。
フェルナンド・ピエヒは、チューリッヒ工科大学で修士号を修得した後、1963年に一族が支配するポルシェに入社し、主にレーシングカーの設計エンジニアとして活躍していました。
その後はアウディに移籍し、1988年にはアウディの取締役会長に就任します。
さらに、1993年にはフォルクスワーゲンへ移り、同社会長を務めました。

このフェルナンド・ピエヒは、とにかく車に対して熱い人間だったそうです。
そのピエヒの熱い想いが形になったモノがドイツにあります。
それが、「アウトシュタット」と「ガラスの工場」です。

自動車の街「アウトシュタット」とは?

アウトシュタットは、ドイツ語で「自動車の街」という意味の、フォルクスワーゲン本社工場に隣接した、ミュージアム、パビリオン、レストラン、ホテルなどを収めた世界最大の自動車のテーマパークです。

フェルナンド・ピエヒは、当時、ドイツ全体の高い失業率が社会問題とされていたことへの対策としてアウトシュタットの建設を決定し、2000年のハノーバー万博開催に合わせてオープンしました。
フォルクスワーゲンの車が作られているウォルフスブルクという街をもっと身近に感じてもらうことによって、ユーザーとのつながりを強め、ウォルフスブルクに価値創出しようというピエヒの狙いが込められているそうです。(参照:GQ

東京ドームの5倍以上もの広い敷地の中には、超一流ホテルのリッツカールトンやミシュラン3つ星レストランのアクアなどもあります。
以前はフォルクスワーゲン生産拠点という以外取り得のない街であったヴォルクスブルクですが、現在はアウトシュタット開業以来、一躍観光地として注目を浴びています。

アウトシュタットの中でも特に人気なのが、カータワーズ。
カータワーズは、20階建てで高さ48mの塔です。
この塔の中には、工場で作られ、まだお客さんの手に渡る前の車が収容されています。
一塔あたりの収納数は約400台。
2塔合計で800台が納められているのです。

このタワー内部は特別な乗り物に乗って見学することが可能となっています。

全面ガラス張りの工場

また、ドレスデンという街には、全面がガラスで作られたフォルクスワーゲンの工場があります。
この工場は、通常の自動車工場とは異なり、排煙や廃液などを一切出さず、壁はすべてガラス張り。
当然ガラスですから、全てスケルトンになっています。
したがって壁には、鳥が衝突してしまうことを防ぐための、特殊なスピーカーを設置していると言います。

どうしてそこまでしてガラスの工場を建てたのか。
それは、ピエヒの「これまで3K(きつい、危険、汚い)的に見られていた自動車工場に対する人々のイメージを改めさせたい」という想いがあるそうです。

現在はこの「ガラスの工場」も自動車ファンにとって人気の観光スポットになっています。

ブランドを築き上げるのに大切なものとは?

アウトシュタットにしてもガラスの工場にしても、会社の利益という観点で見ると、決して効率の良いものではないはず。
効率の良い車作りをして利益率を上げようとするMQBの考え方とは相反するように思えてしまいます。
しかし、車に対する熱い想いをカタチにする、そしてそのことには徹底的に投資をする。
それがフォルクスワーゲンのやり方のようです。

モータージャーナリストの岡崎宏司氏はこのように語っています。
「自動車会社の理想とは、車を売ると同時に、社会や未来に対する夢や希望を与えることであるべきです。
人に希望を与えられるのは、人の熱意しかない。」

「アウトシュタット」「ガラスの工場」、これらに裏付けされるようなフェルナンド・ピエヒの熱い想いがあったからこそ、現在のフォルクスワーゲンブランドが築き上げられたのではないでしょうか。

参考文献:フォルクスワーゲン&7th ゴルフ 連鎖する奇跡

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