今日は最新技術のお話です。
先日、アメリカの自動車専門誌「Road & Track Now」が、フォード マスタングでカーボン素材(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)のホイールが採用されると報じました。
カーボン素材 CFRPとは?
CFRPとは、「Carbon Fiber Reinforced Plastics」の略で、「炭素繊維強化プラスチック」を意味します。
樹脂(プラスチック)を炭素繊維で強化することで、樹脂単体よりも高い強度や剛性を得ることが出来ます。
CFRPの原料の炭素繊維には、PAN系(ポリアクリルニトリル繊維を使った繊維)と、 ピッチ系(コールタールピッチを原料に高温で炭化して作った繊維)がありますが、自動車部品には主に、PAN系の炭素繊維が使われています。
ただ、炭素繊維は軽くて強いのですが、圧縮、曲げ、ねじり等の荷重に耐えることはできません。
そこで、圧縮、曲げ、ねじり等の荷重に耐えるようにするために、強化材(=炭素繊維)を保持する母材が必要となります。
CFRPの母材には、一般的に、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が使用されています。
カーボン素材のメリットとは?
近年、高級車やスポーツカーでカーボン素材の部品を採用する例が多くなってきました。
このカーボンの最大のメリットは、とにかく軽いこと。
その重量は、鉄の25%と言われ、アルミニウムをはるかに凌ぐ軽さです。
今回フォードのマスタングで採用される19inchのカーボン製ホイールは、アルミ製ホイールに比べて約7kgも軽いそうです。
車の性能上とても重要な「バネ下重量」とは?
車において、タイヤやホイールのようないわゆる「バネ下重量」は車の性能への影響が非常に大きいと言われています。
これは、みなさんが重い靴を履いた時のことを考えると分かり易いと思います。
例えば、5kgの荷物を背負って歩くことは、そんなに大変ではありませんが、5kgの靴を履いて歩くと、すぐに疲れてしまうと思います。
車も私たち人間と同じように「バネ下重量」が軽いほど、軽快に走ることができるのです。
技術的に難しかったカーボン製ホイール
近年、車のパーツとして、カーボン素材が少しずつ使用されるようになってきましたが、カーボンの軽さを最大限に活かせるはずのホイールには、これまでなかなかカーボンは適用されませんでした。
その最大の理由は、「耐久性」です。
カーボン素材は熱に弱いため、ブレーキにより発生する熱に耐えることが難しかったのです。
しかし、フォードはオーストラリアのメーカーと共同研究を行い、特別な熱コーティング技術を開発しました。
これによって、ブレーキによる熱にも耐えうるカーボン製ホイールを実現させたのです。
こちらがそのカーボン製ホイール。
黒色の熱コーティングのため、表面にカーボン独特の波柄は見られませんが、断面からは、カーボンの柄が確認できます。
これからは、高級車を中心に、カーボン製ホイールが広く採用されるようになるかもしれません。
参考:Road & Track
ポルシェ911も採用したカーボンホイール
ポルシェ911のオプションとして、カーボン繊維を編み上げて作られる「ブレイデッドカーボンファイバー」のホイールが登場しました。
このホイールは、標準装備のホイールより20%(8.5kg)もの軽量化を実現していながら、強度は20%アップしているようです。
今まで編み上げで作られるホイールはどのメーカーでも実現できていませんでした。
下の動画では、その製造工程が見られますが、その巨大な編み上げ機は圧巻です。
是非見てみて下さい。
なお、このホイールは911の中でも本体価格3334万円のハイグレードな限定車「ターボSエクスクルーシブシリーズ」のオプションとして販売され、ドイツでの価格は約200万円(1万5232ユーロ)とのことです。
出処:ロケットニュース24